【連載企画】VRパースで出来ること

第1回:ROPI 3Dパースビュー開発経緯

今年初旬に発表した「ROPI 3Dパースビュー」ですが、おかげさまで各方面から反響を頂いております。
そこで、今回から数回にわたって「ROPI 3Dパースビュー」についての説明を定期的にお伝えしていこうと思います。
まず最初となる今回は、その開発経緯と、最後にちょっとした「おまけ」も付けておこうかと思います。

■開発の経緯

「ROPI 3Dパースビュー」の開発経緯は「どこでも」「どんな端末でも」3Dパース内を自由に閲覧できるシステムを作れないかな?という、お客様からのご要望からスタートしました。

仕事上のプレゼン・営業等、まだまだペーパーベースで行われている会社が多いと思いますが、逆に一部の会社ではiPadなどを使いペーパーレスでプレゼン・営業などをされている会社が増えてきているのも事実です。この事実を踏まえたうえで4ヶ月の開発期間を経て「ROPI 3Dパースビュー」は誕生致しました。

■静止画パースからの脱却

そもそもパースとは施設・建物等の完成イメージのことです。現在のCGパースに至るまでには、手書きパースがメインの時代からコンピュータが一般に普及した時代を経てCGパースが主流となってきました。
CGパースの中でも3Dソフトで作成したCGパースは、まるで写真のように表現することができるうえ、色々なカメラアングルから静止画も作成できるので、その表現力は昔の手書きパースや2Dソフトだけで作成したCGパースに比べて格段に向上したものになりました。

しかし、3Dデータで作成した静止画のCGパースを動画にしようとした途端に話は変わります。動画を作る場合は現在でも、とても労力が必要だったりするのです。
例えば1秒の動画を作成するには元となる12~24枚の絵が必要となります。なので再生時間10秒の動画を作成する場合では、1秒の動画作成に必要なイメージ画の10倍が必要になる訳ですから120~240枚のイメージ画を作成する必要があります。これは少しでもCADや3Dソフトでイメージ画を作成した経験がある方なら、どれほど大変な作業なのかお判りでしょう。しかも、通常の静止画CGパースでは3Dソフトで計算して作成(レンダリング)したイメージ画に対しPhotoshop等で加工を加え仕上げますので、それと同じクオリティで動画を作ろうとした場合、レンダリングに必要な時間+各イメージ(フレーム)画に対しての画像加工も必要になり、大人数で作業分担でもしない限り途方も無い時間がかかってしまうのです。

「じゃあ、最近のTVではアニメなんかも3Dで作成しているけど、それはどうなん?」と、お思いの方もいるでしょう。最近ちらっとその筋で有名な某製作会社さんをTVで拝見しましたが、会社の1フロア内にはざっと見ただけでも100人程度の方がいました。全員が制作部門の方とは言いませんが、それでもほとんどの方は制作関係の方かと思います。何故なら通常TVで見るアニメの様な3DCGの動画コンテンツを制作する場合、会社の中にモデリング部門やテクスチャを制作するデザイナーだけの部門、モデルに対し動きをつける部門、レンダリングイメージにエフェクトを加える部門、そして独自でシェーダーを開発しているところではプログラム部門もあるかと思います。更にこれらデータを動画としてレンダリングする必要があるので、レンダリング専門のレンダリングサーバーが何十台もあると思います。

個人でもPCの性能が進歩した今なら簡単にCGムービーが作れると思われがちですが、実際は今でも3DCGで動画を作るということは、まだまだ大変なことであり、TVアニメレベルのCGムービーともなると100人以上の体制で各作業に特化した部署を持った会社でもない限り毎週の放送に間に合わせる事など到底無理なのが現状なのです。(ちなみにROPI DESIGNでも3〜5台のPCにてレンダリングを行っていたりします。)

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■リアルタイムレンダリングの限界

先程お話しした3DCGムービー以外にも3Dデータを動かす方法として、PCの性能が日々進化している最近では、3Dで作成したデータをリアルタイムに計算(リアルタイムレンダリング)させる方法もあります。これにより制作した3Dデータ内をPC上で歩いたり、色んな角度から見ることも、ある程度ならリアルタイムで出来るようになりました。確かにPCではそこそこ綺麗なCGをリアルタイムで見ることが出来ますがスマホやタブレットではそこまでのCPUパワーもないので、PCと同じようにリアルタイムで3Dデータを見るには限界があります。

なかには「Shade mobile」のようにモバイル端末でもリアルタイムレンダリングは可能なものもありますが、静止画のイメージパースやCGムービーに比べるとその表現力は格段に劣ります。更にリアルタイムレンダリングを行なうということは、計算させるデータを記憶容量の少ないモバイル端末に膨大な容量の3Dデータを入れておかねばならなくなります。

ではクラウドを利用すれば?とのご意見もあるかと思いますが、その場合でもリアルタイムレンダリングを行なう際は実データと同じ容量の3Dデータを一時的にでもダウンロードする必要がある訳ですので、ダウンロードの時間や端末の容量のことを考えるとスマホやタブレットでリアルタイムレンダリングを行う事は、やはり現段階では実務的では無いように思われます。(数年後には、また違った状況になっているかもしれませんが....)

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ROPI DESIGNでは、こんな車は所有していません。

■webベースの操作・閲覧

最近は「webブラウザー上でwordやExcelを編集出来る。」なんていうことをご存知でしょうか?これは、web上のサーバー側でアプリケーションの処理を行っているんですね。つまり実務的な計算などの処理はモバイル端末側ではせずにサーバーで計算を行って頂き、その結果をモバイル端末側に送っているわけです。

技術的なことは話が更に長くなるので省きますが「ROPI 3Dパースビュー」も、考え方は同じです。つまりwebブラウザーベースで起動/処理できれば「どんな場所でも」「どんな端末でも」閲覧・操作することが出来るわけです。では、実際に3DCGパースでそんな事が出来るものはあるのか?と、言うと自分の知る限りではありませんでした。ただ、それに一番近いものとして「Googleストリートビュー」がありました。

ご存じの方もいると思いますが、Googleストリートビューは撮影車の上に全方位撮影できるカメラを搭載して、道路上を走行しながら撮影して作成しています。「ROPI 3Dパースビュー」も原理は同じです。3Dデータを全方位のレンダリングを行い作成しています。
その上でGoogleストリートビューのようにwebブラウザー上で閲覧・操作できるシステムを構築してwebブラウザーで起動できるようにしたものが「ROPI 3Dパースビュー」なのです。

■作業内容と提供価格

話は少しそれますが、業務を遂行していく上で大切な事として仕事の価格があります。
私共のような設計・デザインに関する職種の場合、仕事の価格とはどのように決まるかといえば、その多くは作業内容に対しての対価がほぼ全てと言えるでしょう。
という訳で「ROPI 3Dパースビュー」の提供価格を決めるにあたり、完成までに必要な作業内容を書き出してみました。
下記作業内容をご確認頂いた上で、ご提供価格をご理解頂けるとありがたいです。

※「ROPI 3Dパースビュー」ではお客様にコンテンツを提供するまでに以下のような作業を行っています。

(1)3Dデータの作成

お客様から頂いた図面データを元に3Dデータの作成を行います。今までのCGパースでは静止画での提供でしたので、作成する3Dデータも静止画として利用する一部分の作成のみで済みましたが、「ROPI 3Dパースビュー」では、1箇所からの視点でも全方向を見ることができるため、作成する3Dデータは図面データを元に作成することができる全ての部分の3Dモデルデータを作成しています。

(2)テクスチャの作成&設定

お客様から指示して頂いた内容で3Dのモデリングデータに対しテクスチャを作成し設定していきます。これも(1)と同じく一部分だけの適用ではなく、作成した全ての3Dモデルデータに対して行っていきます。

(3)全方向レンダリング(全方向イメージデータの作成)

通常のCGパースは3Dデータ内にカメラを設置し1つのアングルをレンダリングしていますが「ROPI 3Dパースビュー」では、その必要性から3Dデータの全方向をレンダリングしています。通常、静止画のCGパースでは30分~(複雑なもので)5時間位かけてレンダリングを行います。「ROPI 3Dパースビュー」では静止画のCGパースとは違い全方向をレンダリングするわけですから….これ以上の説明は考えると気分が暗くなるので省略致しますが….ただ言えることは、通常のムービーを制作することに比べれば格段にレンダリングの時間は短縮されています。(ムービーは再生時間10秒のもので、最低でも120枚のレンダリングイメージが必要となるので、1枚あたりのレンダリング時間30分×120枚=60時間がレンダリングするだけで必要になるわけです。1秒で12フレームのムービーはかなり「カクカクした動き」のものになるので通常それ以上のレンダリング時間が必要ですが...)

(4)全方向イメージデータのレタッチ(Photoshp加工)

通常のCGパースと同じく全方向イメージデータに対してもPhotoshopレタッチを施して仕上げを行います。

(5)webブラウザ上で起動できるデータの作成

作成した全方向イメージデータをwebブラウザー上で閲覧出来るように変換していきます。この際に、各種設定(ビューポイントの設定・追加、ビューポイントの切り替え表現設定、操作パネルの設定、MAPの組み込み、リンクの組み込み)も行ってい来ます。

(6)webブラウザ上で起動できるビルドの作成

webブラウザ上で起動できるデータを1パックにし、webサーバーにアップして処理できるビルドを作成します。
   
手短に説明してこれだけの作業内容があります。
この作業内容から必要な作業時間及び工数を算出し、提供価格を設定させて頂きました。
(この作業内容を考えた上で提供価格を見て頂ければ通常のCGパースに比べ、かなりコストパフォーマンスが図られていることがおわかりになるかと思います。)
※これ以外にも製作時における都度の確認・修正対応や、お客様から頂いた図面データがCADデータ等でない場合は、3Dデータを作成するために図面をデータ化する作業が発生することもあります(図面データがCADデータでない場合は追加料金を頂いています。)

と、第1回目の最後にて、生々しいお金の話で締めくくりになってしまったので、お詫びに少々おまけを添付しておきます。
次回以降は、もっと操作性や発展性のあるライトで楽しいお話になるので、乞うご期待下さい。

↑(おまけ)です。 当初の発表からまず2箇所変更しています。(機能的には1箇所)。 1つ目は「ROPI 3Dパースビュー」がこのページ上で動いていますよね。 2つ目は「TYPE(A)」「TYPE(B)」という切り替えボタンがありますね。 次回は、このあたりのまだまだ発展できる機能的な部分の説明を行います。
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